研究概要 |
平成21年度は,初任教師と熟練教師の授業中の視線の向け方について比較することを目的1とし,両教師の授業後の自己リフレクションの内容について比較することを目的2として実施した。まず,授業者視点カメラ法により授業を録画し,授業終了後できるだけ速やかに,授業映像を観察しながら,任意の時点で一時停止の合図をもらったうえで,自己リフレクション(ふり返り)を行ってもらった。分析用データは,録画された授業映像の分析と授業後のリフレクションの言語記録をもとに収集した。体育館における体育の授業1単元(授業回数8回)を通して初任教師2名と熟練教師1名の視線の向け方と自己リフレクションの内容を比較した。目的1の初任教師と熟練教師の授業中の視線の向け方について比較した結果,熟練教師は初任教師より全体を視野に入れて児童を見ることが多かった。つまり,熟練教師の方が授業中何かあったときに速やかに対応できる視線の向け方をしていた。ただし,初任教師にも全体を見る意識はあることがわかった。目的2の初任教師と熟練教師の自己リフレクションの内容について「教師が児童に視線を向けたきっかけ」「文脈情報」「省察の内容」という3つの観点から分析した結果,熟練教師は授業の回数を追うごとに児童やチームの実態をきちんと把握し,日頃の学習状況を取り入れながら意図的な視線を向けていることが明らかとなった。一方,初任教師もリフレクション映像を見て反省点に気づいたり,授業中に気にかかったことを再確認したりと,授業回数を重ねるにつれてリフレクション内容に変化があることが明らかになった。
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