研究概要 |
授業者視点映像を手掛かりとした授業者自身のリフレクション内容の特徴を、参観者視点映像を手掛かりとした場合と比較して検討した。小学校教員4名を授業者とし,授業者視点条件(授業者の左耳の上に小型CCDカメラを着け,授業者の見ている光景を撮影)と参観者視点条件(教室後方から実験者がビデオカメラを持ち,授業者を映像の中心にしてできるだけ広範囲を撮影)の2つの撮影条件で授業を撮影した。そして,授業実施日の放課後に,録画映像を再生,呈示しながら,授業者に自己リフレクションを求めた。その際,「誰を見ていたかなぜ見ていたか,その時何を考えていたか」など,映像を見ながら思い出したり,気づいたりしたことを逐一発言してもらい,録音した。発言内容を書き起こし,意味単位に分けた上で,5つのカテゴリーに分類した。合計頻度は授業者視点条件(平均55.8回)の方が,参観者視点条件(平均44.5回)より多い傾向にあった。授業者視点条件では,「指導技術」に関する頻度が最も多く,ついで「児童理解」が多かった。一方,参観者視点条件では,逆の順序となり,「児童理解」が最も多く,「指導技術」がつぎに多かった。つぎに,カテゴリー別に撮影条件間の比較を行うと,頻度差が最も大きいのは「指導技術」で,授業者視点条件の方がほぼ2倍の頻度であった。また,「児童理解」も授業者視点条件の方が多かった。一方,「授業展開」は参観者視点条件の方が多かった。以上のことから,参観者視点映像が,授業者を対象としてとらえるのに対し,授業者視点映像は授業者が主体となることから,授業中の思考内容をより想起しやすくしているのかもしれない。また,授業者視点映像は児童に近く,表情もよく見え,会話内容まで聞こえることが,「指導技術」や「児童理解」を増やす理由かもしれない。この結果を授業者視点映像を活用した対話型授業リフレクションにつなげる計画である。
|