研究概要 |
(1)幼児期の子どもが,いつからテレビや写真などの映像を現実と区別できるようになり,それが映し(表象)であることをどのように理解するようになっていくかを実験的手法を用いて明らかにする。 (2)その際,従来の研究でみられたような,映像と現実との二分法的な区別の可否だけに焦点をあてるのではなく,映像が実在と混同される段階と映像が表象とはっきり理解される段階との間に中間的な段階を設定して,この段階の発達的ゆらぎの実態を精緻に捉えることを,特に重要な研究課題とする。 (3)この「映像の表象性理解の三段階発達モデル」では,映像理解の発達を,シンボル(映像の図像的パターン),シンボル媒体(図像的パターンを生みだす物質的基体),指示対象(シンボルの指し示す現実の対象)の三者の関係理解の発達としてとらえ,中間段階を,シンボルと指示対象がはっきり分化しながらも,シンボル媒体についての認識が不十分であるためにこれが意識の後景に退き,シンボルと指示対象が一体となって前景化した状態と仮定する。この仮説的モデルから予想される幼児の,大人の目から見て不思議な映像理解のあり様を実験的に確かめることを通して,モデル自体のいっそうの精緻化を図ることが4年間の研究の到達目標である。
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