本研究の目的は、心理学において十分な知見に欠ける、映像メディア・リテラシーについて、表象発達の一つとしてその内的過程をとらえ、それを自覚可能にするメタ認識を促進する教育方法を検討することであった。 具体的方法としては、大学教育における半期複数クラスの縦断アクション・リサーチによって、発達心理学領域の知識内容を利用して映像メディア・リテラシーを促進する方法を探索的に検討した。 その結果、既成映像視聴に比して、学生自身による映像制作が、映像メディアの機能自体の知識のみならず、映像内容に関する動機づけ、考察を深化する効果があることが見出された。また写真を用いた課題で、映像内容に自己が含まれる場合とそうでない場合の効果の差も予想された。そこで、映像制作に加えて映像内容における自己関与の効果の検討を今後の課題として含める必要性が生じた。 平成20年度の成果は、映像発達研究法の理論化(「映像発達研究法の可能性:フィールドにおける洞察を観る」)、自己写真による発達心理学的考察の深化についての報告(「言語発達観形成とメディアの機能:言語と映像」)、映像制作・利用に係る倫理問題の考察(「『倫理的展開』に心理学を活かすには?-研究者倫理の表裏-」)、映像制作体験の機能の報告(「映像メディア・リテラシーにおける制作体験の機能」)、映像制作体験と映像によるナラティブの性質の分析報告(「映像制作における制作者の映像ナラティヴ:大学生の映像メディア表現における経験と創造の分析」)にまとめた。
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