研究概要 |
平成20年以来、本研究の目的は、心理学において十分な知見に欠ける、映像メディア・リテラシーについて、表象発達の一つとしてその内的過程をとらえ、それを自覚可能にするメタ認識を促進する教育方法を検討することである。具体的方法としては、大学教育における半期複数クラスの縦断アクション・リサーチによって、発達心理学領域の知識内容を利用して映像メディア・リテラシーを促進する方法を探索的に検討した。 1、20年度は既成映像の視聴と比較して学生自身による映像制作が、映像メディアの機能に関する知識、映像内容に関する動機づけ、考察を深化する効果があることが見出された。 2、21年度は映像制作に加えて映像内容における自己関与の効果の検討を行い、映像制作者の映像による自己ナラティヴ機能を検証した。 3、22年度は映像実践課題の内容・技法と言語解説の相互関連分析から自己の映像ナラティヴの基準となる特性を抽出した。結果から(1),制作者に自覚的な撮影場面・対象との関係の履歴、情動体験、構え、の一部が撮影行為に反映すること、(2),結果としての映像から閲覧者がそれらを読み取ること、(3),そこで、映像に表現された空間・時間・行為の意味づけ、審美・情緒体験について、閲覧者の解釈が制作者の自覚とほぼ一致すること、(4),しかしこれらが不一致の場合にはさらに両者の相互作用の質的検討が必要になること、が分かり、「映像ナラティヴとしての映像実践の特性分析」の発表成果を得た。さらに、この不一致が映像制作におよび映像メディア・リテラシーにおいて重要な意義を持つ可能性が示唆されたため、この点について今後の課題とし、後続研究を計画している。
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