研究概要 |
【虚偽記憶における情動の長期的影響】 情動特性(ポジティブ語(以下,ポジ語),中立語,ネガティブ語(以下,ネガ語))別に1ヶ月後の虚偽記憶における年齢差を検討することを目的とした。実験参加者:若年者33名(平均18.7±0.5歳)および高齢者24名(平均76.7±4.5歳)。実験方法:DRMパラダイムを用いた。学習リストは1リスト15語×6リスト。なお,各情動特性を持つ連想中心語リストを2リストずつ用い,PCを用いて90語連続提示した。全語提示後に直後再認,その後,直後再認と同手順で遅延再認,そして、約1ヵ月後に1ヵ月後再認を行った。その結果,1ヵ月後再認においてポジ語では虚再認率は高齢者>若年者であったが,中立語およびネガ語では年齢による効果は認められなかった。 【メタ記憶と虚偽記憶の関係性】 若年者34名(18.8±0.5歳)および高齢者26名(76.3±4.4歳)を対象に,DRMパラダイムを用いて虚偽記憶の実験を行った。また,メタ記憶の特性については,島内・佐藤(2008)で作成した行動レベルで記憶の自信度を測定できる尺度(Meta-Memory scale of Self-Confidence:以下MSSC)を用いて検討を行った。MSSC下位群では,遅延再認の方が直後再認よりも虚再認率が高かった(p<.001)。また,MSSC下位群では高齢者が若年者よりも虚再認率が高く(p<.01),高齢者ではMSSC下位群の方が上位群よりも虚再認率が高かった(p<.05)。これに付随して軽度認知障害(MCI)の疑いのある物忘れ外来患者5名を対象にMSSCを実施した(継続中)。その結果,若年者よりも自信度の高い傾向のある一般高齢者に比べて,軽度認知障害の疑いのある高齢者はMSSC得点の低い傾向が認められた。この点に関しては,日常の記憶の失敗に関わるストレスの影響が示唆された。 以上の成果を,日本老年行動科学会(鹿児島),日本心理学会(大阪),および日本発達心理学会(東京)に参加し,情報交換および発表を行った。
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