研究概要 |
日本語を母語とする人間にとっても,母語としない人間にとっても,日本語の習得の基本的事項として漢字の習得の重要性が指摘できる。漢字学習に関する筆者の一連の研究の知見より本年度の研究では,漢字学習方略と漢字学習の関係について検討するとを第1の目的とした。そこで,本研究では,まずはじめに漢字学習態度や方略を分析し,漢字学習に関係すると考えられる学習方略や漢字学習時に働くメタ認知を明らかにする。そのためにこのような分析でこれまであまり使われてこなかったテキスト・マイニングの手法を用いる。さらにそこで得られた知見から,漢字学習と学習方略や漢字学習時のメタ認知機能の関係について検討した。その結果、漢字学習方略として、「辞書活用方略」「精緻化学習方略」「書字リハーサル方略」「漢字構成素と意味推測方略」の4因子が抽出された。また、漢字記憶時の記憶方略として、「漢字構成素意味記憶方略」、「辞書学習方略」、「漢字形態注目方略」、「書字リハーサル方略」が抽出された。 また、これまでの研究では不足していた、漢字記憶表象の中の筋運動記憶表象についても検討を行うための実験研究の準備として、漢字筆順をコンピュータに記録する手法を開発するための準備を行った。このために、持ち運び可能な小型コンピュータとポールペン書字を検知し、書字過程をリアルタイムに記録可能なハードウェアを用意し、漢字の筆順を記録するシステムと、その書字過程(筆順とそのスピード)を分析可能なソフトウェアの連携を取るための実験機器の整備、調整を行った。
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