日本語を母語とする人間にとっても,母語としない人間にとっても,日本語の習得の基本的事項として漢字の習得の重要性が指摘できる。漢字学習に関する筆者の一連の研究の知見より,漢字学習に関係すると考えられる学習方略や漢字学習時に働くメタ認知の機能が明らかになった。そこで、本年度の研究では,漢字学習方略とメタ認知、および漢字学習の関係について検討することを第1の目的とする。さらに、第2の目的として、漢字の筆順のアニメーションていじによる視覚運動的学習の効果について検討することとした。 そのために、本年は、漢字学習時の筆順アニメーション提示が漢字学習における筆順の学習に効果的かどうかを検討した。その際に、これまでの研究で明らかになった漢字学習時のメタ認知とアニメーション呈示がメタ認知ととの関係でどのような学習方略に関係するかを検討しながら検討する。実験では、漢字学習条件(漢字筆順アニメーション学習条件と静止画学習条件)×学習時空書条件(学習時の空書の有無)の実験計画の元に、実験条件毎に漢字学習を行った後、漢字の再生テストを実施した、漢字再生テストでは、コンピュータを使用して実験協力者の再生時の漢字筆順を記録した。その後、メタ認知の個人差の質問紙を実施した。正再生と共に、筆順の正確性について分析し、筆順アニメーション学習の効果を検討したところ、漢字筆順アニメーション学習条件で空書による書字練習をした場合、漢字再生数が最も多くなった。また、空書を行った場合、漢字の書字スピードが速くなり、流暢な書字ができるようになっていることが確認できた。メタ認知能力と漢字学習条件の間には、明瞭な関係は示されなかった。
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