研究概要 |
(1)日本語を母語とする人間にとっても,母語としない人間にとっても,日本語の習得の基本的事項として漢字の習得の重要性が指摘できる。実際,小学生の学習困難さの一つに漢字の習得が挙げられるし,漢字学習は小学校から国語の時間で一定の割合を必ず割いてきた時間でもある。また,我々は大人になっても時に知らない漢字に出会い,その漢字を調べ,学習することがしばしばある。ところが,その漢字の学習方法となると,国語教育の関係者によるさまざまな主張があるが,その学習方法について科学的に検証されてはいない。 (2)本研究では,第1の目的として漢字学習方略と漢字学習の関係について検討することを第1 の目的とする。漢字学習とは,漢字の形態表象,漢字の構成素の意味表象,さらに構成素間の関係からの意味表象の形成により成立すると考えられる。つまり,漢字学習においては,先行研究の知見に示された漢字表象間の関係を理解することにより各漢字の意味表象を形成していく過程と捉えられる。そのような漢字意味表象の形成過程における学習方略の使用の差が漢字学習の個人差の要因と考えられる。そこで,本研究では,まずはじめに漢字学習態度や方略を分析し,漢字学習に関係すると考えられる学習方略や漢字学習時に働くメタ認知を明らかにする。そのためにこのような分析でこれまであまり使われてこなかったテキスト・マイニングの手法を用いる。さらにそこで得られた知見から,漢字学習と学習方略や漢字学習時のメタ認知機能の関係について明らかにする。
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