幼児を対象に、他者の心の理解の発達と、「ふり」の生成・理解の発達や言語発達がどのような関係にあるのかについて研究を行っている。2009年度は、2008年度に実施した保育園3歳児クラスと4歳児クラスの幼児46名を対象とした実験データの分析を行い、さらに2010年度に行う縦断研究の計画を立案した。実験では(1)言語発達課題として、(1)語彙検査と(2)了解問題、(2)心の理論課題として、誤信念を測る(1)<不意移動課題>と(2)<だまし箱課題>、(3)ふり課題として、(1)ふりの産出課題、(2)ふり遊びの観察、(3)他者のふりの理解課題を行った。これらの課題間の正誤関係等を調べた結果、心の理論課題のなかで、特に自分や他者の心的状態を語るだまし箱課題とふり遊びの生成との相関関係が示唆される結果が得られた。ふりの生成については、ふりの産出課題だけでなく、ふり遊びの観察において、人形をふりの主体として役割を設定する傾向も関係していることが示された。このことは、ふり遊びに見られるような架空の他者の想定する傾向の有無が他者や自分の心の理解につながることを示唆している。本研究ではこの関係をより明らかにするために、ふり遊びを子どもの保護者がいる状況で自由に行ってもらう観察を取り入れて、心の理論課題との関係を明らかにしたいと考えている。したがって2010年度には実験対象児を地域社会の中から広く募集し、大学の行動観察室に親子で来所してもらう。対象児は、観察開始時を3歳0カ月~3歳6カ月とし、(1)言語発達検査、(2)ふり遊びの観察、(3)ふりの生成課題、(4)絵の人物の心の想像課題、(5)誤信念課題を実施する。さらに同じ親子に再度半年後に来所してもらい、3歳6カ月~4歳0カ月の時点でもデータを収集することを計画した。
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