2008年度と2009年度に行った保育所の幼児を対象とした実験をさらに発展させるため、2010年度は、大学のプレイルームに幼児とその親御さんに来てもらい、ふり遊びのいくつかの指標と心の理論および言語発達との関係を詳細に検討することを目的とした実験を行った。課題は、言語発達課題として語彙検査と了解問題を行い、また心の理論課題は、<だまし箱課題><見かけと現実課題><不意移動課題>を実施した。ふり遊びでは、こちらが提示したパントマイムを幼児に演じてもらう3種類のふりの算出課題を行ってもらう他、幼児にブロックで自発的に好きなものを作ってもらい、それを何かに見立てるかどうかなどの観察を行った。さらに、日常生活の遊びの様子や自分から空想の存在を作り出す傾向やその様子について、親から聞き取ることにより、日常生活におけるふりの生成傾向と心の理論の発達との関係についても調べた。また補助的な課題として、絵を見て、登場人物の気持ちを想像してもらう課題も行った。実験には54名の3~4歳児とその親が協力をしてくれた。その結果、言語発達と心の理論課題の達成度との間には、複雑な関係がみられること、またパントマイムのふりの生成傾向は言語発達に関係することが見出された。さらにブロックで、人形の動きなどを自分で作り出す傾向のある子どもは、ある種の心の理論課題の達成度が高いことや、日常生活で想像上の他者を自分で作り出す傾向のある子どもは、誤信念の理解がよいことなどが示された。以上のことから、自分や他者の誤信念に気がつくことは、想像上の人物を作り出したり、演じたりすることと、シミュレーション機能の発達の観点からつながっているのではないかと考えられた。また言語発達は、ふり遊びの発達と他者理解の発達にそれぞれ関係するということが推測された。
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