本年度は、算数問題解決と転移を促す知識構成の縦断的研究の最終の年であり、同一の小学校で、昨年度から研究に協力してもらった小学6年生(昨年度は小学5年生)を対象にし、縦断研究を実施した。 1 昨年度と同様に、訓練を始める前に予備調査を実施した。その後、1学期と2学期の各3週間の訓練の終了後に、本テストを実施した。また、2学期では、本テスト実施後に算数の転移テストも実施した。他の小学校を統制群として、2学期の同時期に本テストと転移テストを実施した。 2 その結果、コンピュータ利用による算数文章題解決の訓練は、1学期から2学期にかけて効果が認められ、本テストの成績の上昇を示した。また、5年生時に3群(成績上位群、上昇群、下位群)に分けた子どもの6年生での成績を分析した。その結果、5年生時に成績が伸びた成績上昇群の子どもは、6年生の1学期の本テストでは、成績上位群と下位群の子どもの中間程度の成績であった。しかし、メタ認知方略である自己説明のコンピュータ訓練を通して成績は上昇し、2学期の本テストと転移テストでは、成績上位群の子どもと同程度の成績を示した。上昇群の子どもは、コンピュータの履歴の分析から、自分の言葉で問題解決の過程を徐々に自己説明できるようになっていた。 3 メタ認知方略としての自己説明が効果をもつことが示されたが、必ずしもすべての子どもが自己説明をおこなうわけではないことも明確にされた。
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