本研究は、子どもの要求や意図がわからないために、育児不適応を生じている母親に対して、適応的な子どもへの関わり方を体験的にトレーニングできる発達プログラムの開発を目的とした、母親による子どもの情動認知の発達過程についての基礎研究である。 平成22年度の中心的な活動は (1)平成21年度に引き続き、妥当性、信頼性が検証されたVTR刺激を用いて、健常な母子群を対象に、母親の情動認知の手がかりと解釈の横断的、縦断的調査を実施した。また、その研究結果を国内外の学会で発表し、基礎的なデータに基づく1編の学術論文を公刊した。 (2)更に、子どもが発達リスクを持つ母子群を対象に、同様の横断的、縦断的調査をスタートさせ、健常群と併せて、縦断的調査データについて、時間的変化のプロセスを詳細に分析した結果を国内外の学会で発表した。 (1)に関しては、面接調査と質問紙調査に基づくデータから得られた、母親による情動認知の特徴と認知の際に利用する手がかりや、対児感情との関連という視点から論文としてまとめ公刊した。(乳幼児医学・心理学研究、発達心理学研究) (2)に関しては、面接調査に基づくデータから得られた母親による子どもの情動認知の特徴と育児不適応との関連という視点から、国内外の学会で発表を行った(日本発達心理学会、日本心理学会、ICIS)。
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