本研究は、子どもの要求や意図がわからないために、育児不適応を生じている母親に対して、適応的な子どもへの関わり方を体験的にトレーニングできる発達プログラムの開発を目的とした、母親による子どもの情動認知の発達過程についての基礎研究である。 平成23年度の中心的な活動は、 (1)平成22年度に引き続き、妥当性、信頼性が検証されたVTR刺激を用いて、健常な母子群を対象に、母親の情動認知の手がかりと解釈の横断的、縦断的調査を実施した。また、その研究結果を乳児とのかかわりにおける母親の主観性と乳児の発達との関連という視点から論文としてまとめ公刊した。(乳幼児医学・心理学研究、発達心理学研究) (2)更に、子どもが発達リスクを持つ母子群を対象に、同様の横断的、縦断的調査をスタートさせ、時間的変化のプロセスを詳細に分析した結果を、健常な母子群との比較検証という視点からまとめ、論文として投稿予定である。 (3)(1)、(2)の調査研究の結果から明らかになった、養育者による"子どもの情動状態を読み取る能力(養育者による子どもの情動認知と、認知する際に使用する手がかり)"のメカニズムと発達プロセスを社会的情報処理的観点からモデル化し、さらにこれらのモデルを臨床的に応用して、子どもの意図や情動がわからないために育児不適応を生じている養育者に対して、適応的な子どもへの関わり方を体験的にトレーニングできる情動認知発達プログラムを開発するための調査研究計画を立案した。
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