本研究の目的は、言語によるコミュニケーション手段が未熟な乳児と母親の関係性の発達に影響を及ぼすことが考えられる、母親の情動認知と文脈利用の発達的変化を、発達早期からの短期間、反復的なマイクロ的視点による研究デザインで詳細な検証を行うことである。その結果、母親は乳児の表情や行動、発声といった子どもに焦点化された情報だけでなく、遊んでいる対象や、母親の内的表象(育児態度や育児信念)も利用して情動を認知している可能性が示唆された。また、育児経験が重なるにつれ、幅広い文脈の利用が可能となる母親と、ある一定の文脈への焦点化が固定化される母親という発達的変化の異なるパターンが示された。
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