研究概要 |
不登校問題はひきこもりやニートとも密接な関連があり、今やわが国にとって大きな社会問題となっている。近年、不登校は、小学校、中学校に在籍する年少の子どもたちだけでなく、高等学校、大学等に在籍する青年にも広がりを見せている。また、不登校の前兆ともいわれる、登校を嫌悪し、回避する感情を自覚する青年や、遅刻や早退、短期の欠席を繰り返す青年の増加も目立っている。予防的側面を重視するならば、不登校傾向に着目し、客観的事実を正確に把握するとともに予防策および対応策を検討し支援を図ることが重要である。 本研究では、そのような重要性を鑑み、本研究を基礎的研究段階として位置づけ、高等学校、大学等に在籍する青年を対象に、青年期の不登校傾向を測定する有用な心理尺度を構成することを目的とした。実際に、5,000人以上の高校生・大学生等のデータ(質問紙、面接事例、文献等)から不登校傾向を表す記述を網羅的に収集整理した。ワーディング処理を施し項目化した上で、教員や臨床心理士の精査を受け、内容的妥当性を有すると判断される項目を精選した。質問紙調査を繰り返し、項目分析および因子分析を行った。それらの結果に基づき、不登校傾向尺度として、登校を回避する感情面を測定する下位尺度と、登校を回避する行動面を測定する下位尺度の2タイプの下位尺度を構成した。2つの下位尺度は高い内的整合性を有するが、今後はさらに不登校傾向尺度の信頼性と妥当性を十分に検討し、不登校傾向を引き起こすメカニズムを解明する必要がある。
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