前年度(平成20年度)は青年期の不登校傾向を測定するための心理尺度を構成するために項目の収集及び分析を行った。その結果、登校を回避する感情面を測定する下位尺度と登校を回避する行動面を測定する下位尺度から成る不登校傾向尺度が構成された。これを受けて平成21年度には不登校傾向尺度の信頼性と妥当性を検討することを目的とした。その主な結果は以下の通りである。 1.高等学校教員、大学教員、臨床心理士らによる項目精査の結果、不登校傾向尺度の項目はいずれも内容的に妥当であることが再確認された。 2.主に高校生・大学生集団を対象に不登校傾向尺度を含む質問紙調査を実施した(各回約100人から5000人規模を対象とした)。不登校傾向尺度の信頼性係数(α係数及び再検査信頼性係数)を算出した結果、十分に高い値が得られた。 3.不登校傾向尺度得点と年間欠席数との間には有意な正の相関が得られた。 4.不登校傾向尺度と、関連が予想される心理検査(抑うつ性、古典的及び現代型の対人恐怖心性、アパシー傾向、自我同一性、孤独感、自尊感情、心理的well-being、心身の健康度全般等を測定する心理検査)との関連を分析した結果、概ね予想通りの結果が得られた。 以上の結果、不登校傾向尺度は心理尺度として一定水準以上の信頼性と妥当性を有することが示され、所期の目的は達成された。今後は新たに開発された不登校傾向尺度を活用し、不登校傾向を規定する要因を検討し、青年期の不登校問題にアプローチするための指針を作成する必要がある。
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