平成20年度および21年度は青年期の不登校傾向尺度を作成し信頼性と妥当性の検討を行った。その結果、不登校傾向尺度は心理尺度として一定水準以上の信頼性と妥当性を持つことが確認された。これを受けて平成22年度は不登校傾向尺度を用い、不登校傾向を規定する要因を検討し、支援のあり方を提示することを目的とした。その主な結果は以下の通りである。 1.不登校傾向(登校回避行動および登校回避感情)は次のような心理的特性の影響を受けることが確認された。すなわち、登校回避行動は、日常生活不安、大学不適応等から正の影響を受け、現在のいきがい・充実、大学内学習(学習意欲)、調和性、誠実性等から負の影響を受けた。また、登校回避感情は、大学不適応、神経症傾向等から正の影響を受け、大学内学習(学習意欲)、大学全体への満足感、誠実性、基本的信頼感、勤勉性、同一性等から負の影響を受けた。不登校傾向改善のためには不登校傾向に影響を与える要因を調整するためのシステムとアプローチが必要であることが示された。 2.不登校傾向(登校回避行動および登校回避感情)について、性別×学年の二要因分散分析を行った結果、交互作用は有意ではなかった。また、性差は有意ではなく、学年差は有意であった。多重比較の結果、登校回避行動は高校1年から3年まで有意な差はなく、高校3年から大学1年、さらに大学1年から大学2年以上にかけて有意に高まった。学生支援は一般に大学新入生に力点が置かれる傾向にあるが、大学2年以上への対策も強化する必要性が示された。
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