統合失調症の認知機能障害リハビリテーションとしての認知矯正療法NEAR(Neuropsychological an d Educational Approach to Cognitive Remediation)に、内発的動機付けと治療フィデリティが与える効果を検証する最初の段階として、Intrinsic Motivation Inventory for Schizophrenia(IMI-SR)と、認知矯正療法NEAR治療フィデリティ尺度の日本語版を作成した。IMI-SRは逆翻訳手続きの後、予備調査として小規模の臨床群に施行し、原著者とのコンサルテーションを経て修正を行った。 認知矯正療法の治療フィデリティを確実にするため山陰地域の医療施設精神科の治療者のスーパービジョンを行い、各患者のリハビリテーション目標、認知機能障害領域、認知課題、治療者による介入にっいて指導した。内発的動機付けを促進する目的で患者に対し認知課題を学習課題としてとらえ、課題の文脈化、個人化、選択肢、学習における社会性を強調した。これは統合失調症のリハビリテーションにおいて内発的動機付けの役割が重要であるとする見地に基づいている。また治療者による言語的・非言語的プロンプトや、モデリング、フィードバック、シェイビングなどの介入法を用いて、患者による効果的な認知課題への取り組みを援助した。認知矯正療法に参加した患者において、認知機能障害の改善と、動機付けと全般的機能変化間の正の相関が認められたが、動機付けは行動指標により測定した。結果は国内外の学会、論文などで発表した。 平成21年度は、治療者スーパービジョンを継続し、施設ごとに治療フィデリティを測定する。さらに治療効果を認知機能指標、社会機能指標を用いて測定し、内発的動機付け、治療フィデリティとの関連を検討する。
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