本年度の研究の目的は、統合失調症の新たなリハビリテーション手法である認知矯正療法に、患者の内発的動機付けと、治療者の治療フィデリティが与える効果を解明することであった。本年度は、認知矯正療法参加前後の統合失調症患者の内発的動機付け変化を調査するためのデータ収集を山陰の5つの医療施設にて継続した。内発的動機付けと関連した要因を検討する目的で、QOL尺度などを使用した。 認知矯正療法の治療フィデリティを研究に中立的な評価者により評価し、治療フィデリティと内発的動機付けがそれぞれ認知矯正療法の効果に与える影響を検討した。また新たな手法である認知矯正療法の普及のために、昨年度に引き続き、上記施設治療者の指導や打ち合わせを定期的に行った。 心理臨床学会、精神障害者リハビリテーション学会、Australasian Schizophrenia Cpnferenceなどの大会でポスターや口頭発表を行い、『精神医学』『認知療法研究』などの学術誌に結果を報告した。患者の内発的動機付けは認知矯正療法の効果に肯定的な影響を与えている一方で、治療フィデリティには施設間で差が見られないため、引き続き対象者を増やして調査を継続する必要性が示唆された。
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