研究概要 |
本年度は、児童を対象とした認知行動的抑うつ予防プログラムの長期的維持効果を検討した。対象者は,介入群として小学校5年生66名,統制群として小学校5年生73名であった。 介入群の児童には,前年度に,心理教育,社会的スキル訓練,および認知的再構成法を中心的な構成要素とする9セッション(1セッション45分)の抑うつ予防プログラムが実施された。本年度は,これらの児童が小学校6年生になった時点(介入終了8ヵ月経過)でのフォローアップ査定が実施された 結果は次のとおりであった。 1) 抑うつ指標であるCDIとDSRSのいずれにおいても,介入群では,プログラム実施前から実施後にかけて,抑うつが低減し,8ヵ月後の時点での抑うつ得点と実施直後の抑うつ得点には有意差が見られなかった。つまり,介入効果が維持されていた。 2) 社会的スキルとネガティブな認知の指標では,介入群に有意な維持効果が認められた。 3) 介入前の時点で,CDIとDSRAの基準点をいずれも越えていた高リスクの対象者のうち,介入群では83.3%,統制群では50%が8ヵ月後の時点で高リスクでなくなっていた。 4) 介入前に高リスクでなかった児童が,8ヵ月後に新たに高リスクになったのは,介入群で6.3%,統制群では10.6%であった。 以上の結果から,本研究で開発された抑うつ予防プログラムは,児童の抑うつを軽減させるばかりでなく,その軽減効果を次学年進級後まで維持させることが明らかになった。今後は,このプログラムの効果が,学校種の変わる中学校においても,維持されるかどうかを検討する必要がある。
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