研究概要 |
平成20-21年度の研究成果から,本プログラムによって,社会的スキルの獲得が促進され,認知の誤りが修正されることが明らかになった。そこで,本年度では,これらの構成要素が,抑うつの低減に対してどのように寄与しているかを実証することにした。 そこで,本プログラムを新たな被験者に実施した。対象児童は,介入群82名(4年生35名:6年生47名)と統制群88名(6年生)であった。彼らは,介入前,介入後,フォローアップ期(介入終了から6か月後)の3時点で,以下の測定尺度に回答した。 (1)抑うつ(子ども用抑うつ自己評定尺度;DSRS : Children's Depression Inventory : CDI (2)社会的スキル(目標スキルの自己評定尺度:「やさしい言葉かけ」(仲間強化スキル),「上手な頼み方」(主張性スキル),「あたたかい断り方」(主張性スキル) (3)認知(認知の誤り尺度改訂版:児童用自動思考尺度(「サポートへの期待」,「将来への期待」(ポジティブな自動思考),「自己の否定」,「絶望的思考」(ネガティブな自動思考)) 構造方程式モデリングを用いた分析の結果,社会的スキルでは「やさしい言葉かけ」(仲間強化スキル)の増加が抑うつを低減させ,認知については,「認知の誤り」と「将来への期待」,「自己の否定」,「絶望的思考」などの自動思考が改善されると抑うつが減少することがわかった。そして,この効果は,フォローアップ期で鮮明になることも分かった。 以上の結果から,本研究で開発された抑うつ予防プログラムは,社会的スキルの獲得(特に,仲間強化スキル)と認知の誤り・自動思考の修正が,抑うつの低減に影響を与えていることが実証され,本研究で開発された抑うつ予防プログラムは,児童の抑うつ低減とその維持に効果的であることが明らかにされた。
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