研究概要 |
脳血管障害に伴って生じる言語障害である失語症を評価する方法としては,既存の検査がいくつかある。しかし失語症者の日常コミュニケーションの様子を,観察手法によって,調べる検査は未だみられない。本研究では,失語症者の日常コミュニケーション自立度評価法を開発することを目的とした。 まず研究1つめとして,失語症者の家族に質問紙調査を実施し,失語症者の家族が抱える介護負担感や肯定感を調べた。あわせて家族が捉える失語症の重症度と,専門家である言語聴覚士が捉える失語症重症度について調査し,比較した。その結果,両者の捉え方に差異があることが明らかになった。家族の捉え方には,失語症者が遭遇する,その時々のコミュニケーション場面による難易度の違いが反映されていることが伺われた。 研究2つめとして,慢性期の1失語症者に集中訓練を実施した。その訓練前後に既存の失語症検査を行うことによって,集中訓練の効果を検討した。その結果,既存の検査でも改善がみられた側面・みられなかった側面があることが明らかになった。また訓練前後の会話を質的に分析することによって,その変化の有無を見出した。しかし日常コミュニケーション場面への効果を把握することができず,本研究が目指すような評価法の開発が必要であることを痛感した。 さらに評価法試案作成のために,各失語症検査項目を整理するとともに,失語症者の日常コミュニケーション場面に関する調査を開始した。研究2年目も継続し進める予定である。
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