研究概要 |
平成22年度における研究では,前年度までに行った,階層的生存分析モデルを用いた「親への愛着の再犯に対する抑止効果に対する地域社会の完全失業率の影響に関する研究」の結果,及びこの研究の前提となる時系列分析によるCantor & Land(1985)の理論の妥当性の検証結果が,それぞれの予測と一致しなかったことを受けて,以下の三つの研究を行った。 1) Cantor & Landの理論そのもの適用可能性に疑問が生じたことから,米国及び韓国に対象国を広げ,また罪名も殺人,強盗及び窃盗に対象を広げて,時系列分析によりCantor & Landの理論の検証を行った。その結果,いずれの国においても,またいずれの罪名においても,必ずしもCantor & Landの理論の予測と一致しているわけではないことが確認された。したがって,「親への愛着の再犯に対する抑止効果に対する地域社会の完全失業率の影響に関する研究」の解釈においては,Cantor & Landの理論が正しいとの前提に立つことができないことを確認した。 2) 「親への愛着の再犯に対する抑止効果に対する地域社会の完全失業率の影響に関する研究」の結果を個々の非行少年の事例で確認するために,非行少年に対して,life-history calendar法を用いて,失業と非行の時間的前後関係を検証した。その結果,必ずしも非行に先行して失業が生じているわけではないことが確認された。 3) 上記結果を踏まえ,これらの結果を,総合するための論文執筆を行った。
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