本研究は、近年欧米で問題とされている性犯罪被害者に対する第三者の態度(偏見など)をもたらす要因の解明を、社会心理学の責任帰属理論を中心とした枠組みで行おうとするものである。今年度は、前年度に実施した、被害の甚大さを中心に、第三者の伝統的性役割観、性犯罪神話受容度、などと被害者への責任帰属の関係を検討した質問紙調査の結果の分析をおこなった。その結果、欧米の所見とは異なり、伝統的性役割観や第三者の性別と責任帰属に関連性を認めることはできなかった。しかし、性犯罪神話受容度が責任帰属と関係し、神話の受容度が高いほど被害者に責任帰属する傾向が強まることが認められた。しかも、従来の研究では明確な関係が認められなかった被害の甚大さは、被害が甚大な罪種ほど性犯罪神話受容度の影響が強く表れるという形で責任帰属と関孫することが認められた。 この調査はサンプルが限定されていること、伝統的性役割観の質問内容に問題がある可能性が考えられたため、質問項目を改訂し、複数の大学の学生を対象に本調査を実施した。その結果は現在、分析中である。一方、被害者の生活態度という被害者側の要因の影響についても調査を実施した。この結果の分析は次年度に行う予定である。 本研究の現時点での所見は被害者への責任帰属を生み出す要因が欧米とは異なる可能性を示唆している。同時に、甚大な被害ほどそういった要因の影響を受けやすいという可能性も示唆しており、性犯罪被害者への対応での留意点を今後明らかにするものと思われる。
|