研究概要 |
今年度は、情動に伴う身体の変化について測定する尺度を作成した。 大学生(280名)に対し、6種類の情動(怒り、恐怖、喜び、嫌悪、悲しみ、驚き)を感じた際の身体的変化について、自己報告による調査を実施した。その結果、情動に伴う身体感覚の頻度は,恐怖で最も高く,嫌悪では最低だった。次に6種類の情動に伴う身体感覚の身体部位に関して,クラスター分析(x^2測度・グループ内平均連結法)を行い,身体部位の度数パターンが類似の情動をクラスターにまとめた。その結果,喜びと悲しみは類似しており,そこから,嫌悪,驚き,怒り,恐怖の順に類似度が下がっていくことがわかった。 次に、情動に伴う身体感覚を測定する尺度を開発し,その妥当性と信頼性について検討した。因子分析の結果、3因子で14項目が採用された。第1因子は全身や手足の収縮や震え,顔面の紅潮に関するものであることから,“自律神経の変化"と命名された。第2因子は“顔が歪む"“眉間にしわがよる"といった内容から,“表情筋の収縮"と命名された。第3因子は身体の脱力状態に関する内容から,“身体の脱力"と命名された。合計14項目の内的整合性を示すα係数は,全体で.82であり,尺度としての信頼性が高いことが示された。さらにこれらの身体感覚が感情の主観的体験に及ぼす影響を検討した結果、“自律神経の変化"を知覚するほど、感情に巻き込まれる傾向があることがわかった。 これらの結果から、情動により特異的な身体感覚のパターンがあること、そしてそれと感情との間には、密接な関連があることが明らかにされた。
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