平成21年度は以下の研究を行った。 1.前年度より継続して行っている、修士課程修了直後の心理臨床家17名を対象としたインタビュー調査を各協力者につき1回(但し、一部の協力者については次年度に実施)行った。また、前年度より行っているインタビュー調査について分析を行い、その結果の一部を発表した。分析結果からは、協力者の大学院時代の臨床訓練に関する困難体験として、自らが臨床家として十分でないと感じたり、頼りや手がかりがなく暗中模索の状態の中、日々の臨床活動に携わらなければならないと感じていることが示された。そして、無力感を覚えながら、失敗への恐怖を抱くという、常に気を休めることのない"警戒モード"にあることがうかがえた。一方、大学院時代の臨床訓練において有意義であったこととして、単に理論概念や手続きを学ぶのではなく、学ぶ対象に対して感情的に関わることが重要であることが示された。とりわけ、対人的距離感の近い中で、自分の言動について直ちに指摘やフィードバックを受けるという体験が肝要であることが示唆された。 2.日本の臨床心理士養成のための第1種指定大学院ならびに専門職大学院(計142校)の付属臨床心理実習施設を対象として、大学院生(実習生)のスーパービジョンがどのように行われているのか、方法や時間数など、その実態を探る目的で、調査用紙を作成し、郵送により配布を行った。 3.心理職の専門職としての意識(アイデンティティ)について、臨床心理学の学問体系の中に位置づけて概念化することを行った。具体的には、臨床心理学を実践活動、研究活動、専門活動として体系化し、専門職としての意識の確立が専門活動の主要な教育目的となることを理論的に示した。
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