研究概要 |
心理臨床の面接場面で,セラピスト(Th)はクライエント(Cl)の言葉たけでなく,情緒表出や行動を観察することによって必要な情報を取得・分析していると考えられる。このような言語的・非言語的情報の取得・分析は,Thの経験によって異なることが想定される。 本研究では,心理面接場面における言語・非言語情報の取得・解釈の過程を明らかにすることを目的として模擬面接の映像を撮影し,諸要因の時系列的な推移について検討を行う。その際,面接経過にともなうTh・Clの呼吸・脈拍といった生理指標の変動と,言語的・非言語的要因との照合も行う。また,さまざまな臨床経験年数のThによる面接を比較分析し,面接技能の上達過程について分析を行う。 平成20年度では,模擬面接場面の設定・撮影に必要な機材の充足,関連文献の検索・内容検討(長屋・永田・深津,2009),心理学部での心理面接教育実践の分析(永田・立川・野副・長屋,2009)を実施した。また,実際の実験では,Th役としてA群:初心者(大学院生),B群:臨床経験年数1〜2年,C群:臨床経験年数5〜6年,D群:臨床経験年数10年以上に,Cl役として大学学部3・4年生の学生に協力を依頼した。平成20年度は,A群6名,B群0名,C群4名,D群0名,Cl役10名の協力を得て,模擬面接実験を実施した。その結果,A群とC群では,(1)面接時の両者の緊張の変化が異なる,(2)笑い・笑顔・ジェスチャーは経験にかかわりなく二者間の同調性が高い,(3)A群はClへの注視が持続するが,C群は注視と視線の逸脱が同様に生じる,といった所見が得られた。 今後の研究では,経験年数の異なるThのデータ収集・分析,言語的情報の分析,面接の第三者評定などを実施する予定である。これらの検討により,実際の心理面接の進行過程の様相,セラピストの上達過程等に関する所見が得られることを望んでいる。
|