研究概要 |
心理臨床の面接場面で,セラピスト(Th)はクライエント(Cl)の言葉だけでなく,情緒表出や行動を観察することによって必要な情報を取得・分析していると考えられる。このような言語的・非言語的情報の取得・分析は,Thの経験によって異なることが想定される。本研究では,心理面接場面における言語・非言語情報の取得・解釈の過程を明らかにすることを目的として模擬面接の映像を撮影し,言語的・非言語的な諸要因の時系列的な推移について検討を行った。また,さまざまな臨床経験年数のThによる面接を比較分析し,面接技能の上達過程について分析を行った 前年度までに,経験年数の異なるセラピストとクライエント(学部生)による模擬面接場面の撮影を行い,行動・発語に関するデータの取得と分析を実施した。実験協力者はA群:初心者(大学院生),B群:臨床経験年数1~2年,C群:臨床経験年数5~6年,D群:臨床経験年数10年以上の4群とし,平成22年度には全群の分析結果について学会発表を行った。また,本年度は模擬面接に参加したセラピストの主観的体験,および臨床経験者による第三者評定のデータ分析を実施した。その結果,臨床経験が2年未満のThは自己評価が低い傾向があり,10年以上の経験を積むことによって緊張することなく面接に臨むことが可能となることが示された。また,Clの緊張を緩和することは心理面接の進行上必ずしも有効ではなく,Clがある程度の緊張感を維持し,内省を深めるような働きかけが重要だと考えられる。
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