<本研究の目的> 過酷な体験の語りが支援者や研究者に与える心理的影響について検討することである。 <本年度の研究目的と研究実施計画> 1. 研究者への心理的影響では「語りの聴き手である研究者の語り」の情報取集を行い検討する。 2. 支援者への心理的影響では、犯罪被害者支援(ドメスティックバイオレンス被害者の支援を含む)に焦点を絞り、過酷な体験を聴くことが支援者にどのような心理的影響を及ぼすかを検討する。 <研究の成果> 1. 研究者への心理的影響については、質的心理学会の研修企画シンポジウムで「犯罪被害者」の支援と研究を行っている研究者の講演と討論、とうふ研での「ハンセン病者への聴き取り」に関する話題提供に参加し、聴き手/研究者であることについての情報収集を行った。これらの知見と自身の「犯罪被害者に語りを聴かないという選択」をどのように関連づけていく作業が今後の課題である。 2. 支援者への心理的影響については、DV相談の担当者4名に対してグループインタビューを実施し、KJ法により分析を行った。支援者はDV相談の困難さや自己を晒すつらさを感じながらもシステムを整え、支援者のつながりを大事にしていることが語られた。来談者との距離感、育ちの支援の重ね合わせと区別など関わりながら距離をとる関係性がDV相談の特徴と考えられた。重篤な代理受傷に関連する語りはなく、犯罪被害者支援とは語りの様相が異なると考えられた。
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