研究課題/領域番号 |
20530650
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研究機関 | 聖カタリナ大学 |
研究代表者 |
矢野 宏光 聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 教授 (90299363)
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研究分担者 |
中澤 謙 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (30254105)
大槻 毅 流通経済大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20375372)
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キーワード | 超高齢社会 / 抑うつ / 高齢者 / 社会的健康 / 離島 / コミュニティ |
研究概要 |
本研究では、超高齢コミュニティである瀬戸内海に位置する島嶼部(以下A地域)を研究対象地に設定し、そのコミュニティ及びそこに暮らす高齢者の社会的健康度の拡大に向け、何が求められるのかを明確にするため、社会的健康度が高いといわれている他の離島地域(以下B地域)との比較調査を進めてきた。 今年度は、前年度までの調査結果を踏まえ、より詳細に研究対象地の特徴をとらえるため、2地域(A地域・B地域)を対象として質問紙調査を実施した。この調査は各地域に在住する高齢者全員を対象とした全数調査をベースとしている。この調査から得られた知見と今後A地域の社会的健康度拡大のために必要とされる課題を以下に示した。 1. 同様の高齢・離島コミュニティに暮らす高齢者であっても、その地域に暮らす高齢者の考え方は大きく異なり、それは単にパーソナリティの違いだけではなく、むしろ地域の文化的背景や地域社会システム(歴史・慣習・しくみ等)から影響を受けている可能性が非常に強い。 2. その地域で生まれ育ちそこに暮らし続けている人と、他の地域から婚姻などの事由によって移住してきた者では、ストレスを感じる度合いが全く異なっている。そのため、他地域から移住してきた者に対してのメンタルサポートプログラムの必要性が認められた。 3. コミュニティの健康度を向上させるためには、地域に伝承される祭事や行事を継承していくことが必要である。だが、実際に後期高齢者で形成された超高齢コミュニティにおいては、そこに暮らす住民だけで以前と同様に祭事や行事を維持・運営していくことがきわめて困難である。そこで、地域の大学やNPO組織などが介入し、歴史的背景を踏まえた暮らし、すなわちその時季にすべき祭事や行事を継承しながら日常の暮らしがおくれることが、高齢者個人の心理的安定につながり、延いてはコミュニティの社会的健康度の向上に繋がっていくと考えられる。 今後、昔と変わらないコミュニティの暮らしを維持するため、不足部分を介入的に補う「しくみ」をどのように構築するかが求められるといえよう。
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