本研究は、環境内の物体を認知する視覚情報処理のうち対象のコントラスト検出過程に対する理解を深めることを目的としている。具体的には、コントラスト検出メカニズムの一端(空間的重み付け関数(spatial weighting function))の解明を目指す。 平成20年度の目的は、off-frequency lookingを検討することであった。視覚刺激のtargetとnoiseの空間周波数が重なると、被験者はtargetの周波数から少し外れた(noiseに重ならない)周波数をモニターしてtargetの有無を判断する(Off-frequency-looking)であろうか。心理物理学的実験を行い、Off-frequency lookingが入の観察者では可能か、という問題に答えようとした。観察者が課題に応答する場合は、固定的な検出鋳型を使うわけではなく、与えられた課題に適応した鋳型を使うであろう。Ideal observerは、情報量が多い周波数帯域にweightをもった鋳型を使う(off-frequency looking)ことが、理論的に示されている。この問題は、target grating(縞パターン)の検出課題で用いられる空間的重み付け関数を推測することにより答えられる。 実験結果は、予想とは逆に、人の観察者ではOff-frequency-lookingは起こらず、観察者はノイズの周波数帯域にweightをもった検出鋳型を使うことが示された。この傾向は、コントラストが低いパターン(3%以下)と、コントラストが中程度のパターン(10%以上)において同じであった。また、低周波数のノイズと中程度の周波数のノイズを比較すると、ノイズの影響は対称的ではなかった。これらの結果は、人のパターン検出に関する新たな知見であり、慎重な理論的検討中である。
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