予測の脳活動を反映している脳波(事象関連電位)"刺激先行陰性電位(以下SPN)"を指標とし、マルチモーダルな生理指標測定を行い、動機づけとコミュニケーションの関係と脳活動を解明することが本研究の目的である。 本年度は、脳波・fMRI・NIRSのマルチモーダルな生理指標計測(実験)と行動指標の測定を完了した。実験条件設定には当初の計画を変東し4条件へ改良を加え、表情、言語、記号、コントロールの4条件から脳活動を測定した。実験は東京工業大学の倫理規定に従い、主に東京工業大学の延べ50数名の学部生・大学院生に被験者としての協力を得た。 脳波データの分析結果、どの条件(コントロールを除く)も視覚による刺激呈示のため、頭頂から後頭に掛けて振幅が高まっていた。条件間の違いは前頭部に現れており、表情条件での振幅が低かった。言語条件と記号条件の頭皮上電位分布が似ていた。fMRI実験の結果も同様の傾向があり、どの条件でも後頭部に大きな賦活があり、島皮質の活動もあった。表情条件で、顔情報処理に関わる紡錘状回の活動が両側半球で観察された。NIRS実験での結果は、プローブ装着の範囲が限定的であったためか、条件間での顕著なく感じた被験者が多かった。また、記号条件での動機づけ度合ひがやや低かった。 これらの結果を考察すると、動機づけの程度は与えられるフィードバックの意味がはっきりわかるかどうかとの関連が見え、言語によるフィードバックは、意味を間違えようがないことが強く感じられ、それが動機づけの高めることへの関与が示唆された。脳波とfMRI実験の結果から、表情条件での情報処理が言語と記号条件とは異なっていることが示された。
|