最終年度に当たる本年度は、逆さめがね体験を科学教育や心理学基礎実験に活用する応用・実践研究に重点を置いた。 まず、科学教育に関しては、青少年のための科学の祭典などでこれまで行って来た逆さめがね体験イベントの成果を、科学的推論の促進と評価をテーマとする論文にまとめ、連携研究者の関口との連名論文として発表した。のぞき込むと箱の中が左右逆さに見える左右反転視条件で行うトレース作業に対する実施前の予測と、遂行の結果、予測が違っていた体験が生じるように課題を構成した。その体験を生かして、今度はのぞき込むと上下が逆さに見える上下反転視箱での同様の課題遂行への予測的推論が修正されるか否かを検討した。その結果、小学生であっても、成人と大差ない予測修正が可能かであることが明らかになった。 心理学基礎実験への活用に関しては、福祉系心理学科における基礎実験で検討を行い、研究協力者の小高との連名論文として公表した。閉眼して何も見えない状況での遂行よりも上下反転した視覚情報がフィードバックされる条件の方がより遂行が難しいこと、さらに難しい左右反転視条件では、できるだけ早く遂行するようにストレスをかけられると、そうした指示を受けない条件での遂行よりも長い所要時間が必要になることが明らかになった。閉眼条件よりも誤った視覚情報下での遂行の方が難しいとの全般的結果は、受講者にとってインパクトが大きく、実験により実証的に検討することの意義を体験できる貴重な実験テーマとなった。
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