研究課題
本研究は、視覚誘導性自己運動知覚(ベクション)に及ぼす視覚刺激の3次元空間内での配置の効果を分析することにより、環境への行動的適応に必要不可欠な自己身体の空間的定位が、どのような知覚情報処理プロセスにより実現されていちのかを実験心理学的手法を用いて解明することを目指すものである。本年度は、研究計画の初年度として、内外の研究動向を精査し、研究計画を再調整したうえで、実験環境の整備を行った。さらに、視覚刺激の空問特性のうち、これまでその自己運動知覚に及ぼす影響が組織的には検討されて来なかった、視覚刺激の剛体性の効果を心理実験を用いて検討し、1)等速運動を行なう広視野視覚刺激に重畳された付加的視覚刺激振動が視覚刺激の剛体性感を向上させ、より強い自己身体運動を誘導すること、2)付加振動の同期性や斉一性を低減させることにより、視覚刺激の剛体性感が低減することにより、それに量的に比例する形で自己運動強度が低下することを見出した。これらの結果は、視覚刺激の2次元/3次元的配置という物理的な空間特性と同様に、その剛体性感という知覚的特性が、自己運動知覚の生起に大きな影響を及ぼしうることを示唆するものである。今後は、剛体性など視覚刺激の多様な空間特性の効果を引き続き検討し、それらの要因が3次元空間内での運動刺激の配置の効果とどのような関係にあるのかを明らかとすることにより、視覚情報に基づく自己運動知覚に関する心理学モデルの構築を目指す。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Japanese Psychological Research, Vol. 50 50
ページ: 77-86