本研究では、正常なマーモセットと扁桃体の機能を低下させたマーモセットを用いて、親子間、個体間のコミュニケーションにおける表情認知や音声認知に関する神経機構の変化を単一神経細胞活動の反応性を調べる事により明らかにする事が目的である。 平成20年度では正常なマーモセットを用いて音声認知に関わる神経細胞活動を記録する実験に先立ち、研究に必要なハードウェアの制作を行った。市販されているリスザル用(体重1kg)のモンキーチェアでは体重400g前後のマーモセットには使用できないので、リスザル用のチェアを参考に新たにマーモセット用モンキーチェアを作製した。また、マーモセットの音声(5種類)と非マーモセットの音声(犬の声と日本ザルの音声)刺激が提示できる、次のGo-Nogo課題のプログラムを作成した。そして平成21年2月より2頭のマーモセットを用いて訓練を開始している。サルの眼前あるモニターの中心に手掛かり刺激(赤いスポット)が1秒間提示される。その後2-3秒後1秒間聴覚刺激が提示される。マーモセットの音声(Go刺激)ならばマーモセットがすばやくレバーを引くと報酬としてジュースを与え、非マーモセットの音声(No-go刺激)ならばレバーを引かせず、次に提示されるマーモセットの音声(Go刺激)が提示される時にレバーを引かせ、報酬としてジュースを与える課題である。この課題を2頭のマーモセットに行わせ、80%の正答率が得られまで訓練する。学習が成立した後、扁桃体や前頭葉に埋め込み電極を挿入する手術を施し、単一神経細胞活動を記録する実験を始める予定である。
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