本研究では、正常なマーモセットと扁桃体の機能を低下させたマーモセットを用いて、親子間、個体間のコミュニケーションにおける表情認知や音声認知に関する神経機構の変化を単一神経細胞活動の反応性を調べる事により明らかにする事が目的である。 平成22年度では正常なマーモセットを用いて音声認知に関わる神経細胞活動を記録する実験に先立ち、餌報酬を与えるためのハードウェアとソフトウェアの制作を行い、平成22年12月にできあがった。マーモセットの音声(5種類)と非マーモセットの音声(犬の声と日本ザルの音声)刺激を用いて、次の課題を行っている。サルの眼前にあるモニターの中心に手掛かり刺激(赤いスポット)が1秒間提示される。その後1秒後に1秒間聴覚刺激が提示される。マーモセットの音声(Go刺激)ならばマーモセットがモンキーチェアに取り付けてあるボタンをすばやく押すと餌の前にあるシャッターが下がり報酬としての干し芋を得ることができる。非マーモセットの音声(No-go刺激)ならばボタンを押させないようにし、次に提示されるマーモセットの音声(Go刺激)が提示される時にボタンを押させ、報酬として干し芋を得ることができる課題である。この課題を4頭のマーモセットに行わせ、次の結果を得た。(1)干し芋を取る事やボタンを押させる事を覚えさせるために1-2ヶ月の訓練が必要である(2)ケージで与える餌の量を制限する事により、訓練を毎日行うことができる。(3)干し芋は1日の訓練で、50-100個与えることができる。これらの結果や得られた学習データを平成23年9月に行われる第34回日本神経科学大会に発表する予定である。
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