研究概要 |
本提案では「理解の認知神経動力学と特殊教育への展開」として,m系列変調法を試験的用途で実際に使えるようにするために必要な技術開発研究を行っている.平成22年度の主要な成果は以下の通り:(1)単純ベイズ分類器のような機械学習やパターン認識の手法を用いなくても,8回程度の加算平均を行うだけで,個人ごとの評価に必要な信号雑音比が得られることを確認した。これは計算負荷を減少し、この手法の実用化に重要である。(2)広汎性発達障害の評価への応用可能性を模索した。顔同様にヒト音声に対する特異的応答が機能MRI,MEGなどさまざまな神経心理学的指標で得られているが,広汎性発達障害児はヒト音声に対する反応が定形発達児と異なることが知られているので,ヒト音声をm系列変調して聴取時脳波を記録し,成分相関関数として抽出される誘発反応を分析することで,社会性の発達障害の評価に貢献し得る.実際に6人の健常成人を対象とし、20秒間のヒト音声・環境音・それぞれのスペクトルスクランブル刺激それぞれ8種類にm系列変調を施し,聴取時脳波を頭皮上11電極から試験的に記録した。記録された脳波と変調m系列の循環相互相関関数を計算し,8回の計測の間で平均し,独立成分分析を行って関連成分の抽出を行ったところ,相関時間250ミリ秒もしくはそれ以前に、ヒト音声に特異的な反応が得られた。この時相は先行研究の誘発反応潜時に合致する。この反応を安定的に抽出する技術をさらに開発することで、短時間で実施可能な発達障害評価法の開発につながる可能性を開拓した。
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