研究概要 |
伝統的な統計手法の研究においては,確率モデルにおける推定方法の精度の向上に焦点があり,数理的な理論の進展が著しい。しかし,学力試験を含む心理学研究における実践的データの分析の現場においては,これらとは異なる進展が要求されている。最大の課題は,蓄積されたデータの持つ複雑な構造や背景情報を,研究上の真摯な要求に応えて取り入れることのできる分析手法が十分ではないことにある。多くの応用場面における主要な要求は,データの持つ多様な背景情報を分析に生かすこと,つまり現実的な課題の解決において要求されるに十分であるような対象関係の複雑さを表現しうるモデルを工夫しつつ,またこれらから導かれる意味的な制約(特に推定のためのモデルの候補の生成やパラメータの事前情報による拘束において)を十分に利用することにある。この要求に応え得るデータの分析方法を開発することが本研究の目的である。本年度は以下の研究を行った。 1)複雑な属性を持つデータの統計的分析を行うために,記号処理言語(Prolog)を利用したデータ解析支援プログラム(群)を作成した。特に,多重分割表の分析と表示のために,複雑なモデル操作を可能とする方法を実現した。 2)過去3年間分のセンター試験における得点調整対象科目間の難易度の比較を,非線形因子分析を用いて試みた。 3)本追モニター調査時に一部共通設問項目計画による実験を行い,平成20年度と平成21年度のセンター試験の英語本試験問題の難易度比較を,非線形因子分析と2PL-IRTを用いて行い,推定精度について検討を加えた。
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