研究概要 |
I.ノイズ先行呈示によるメンタルセット変調を生む条件の特定 昨年度の成果から,先行呈示する試行数は80試行以上は必要であることがわかったので,本研究では120-200の先行試行を呈示し,それが後の試行に及ぼす効果を観察した. (1)抽象的学習方略の性質の検討 ある刺激属性に対する鋭敏化が起こっていたのか,あるいは抽象的な刺激vs.妨害刺激の関係を学習していたのかを特定した,学習セッションでの刺激とテストセッションでの刺激を重複しないように設定した実験の結果,この刺激セットでもテストセッションへの学習の転移が生じていた.従って,抽象的な刺激vs.妨害刺激の関係を学習していたことがわかった. II.ノイズ先行呈示効果の持続時間と転移可能性の検討 (1)で見られた学習効果の持続時間を調べる. 抽象的な学習法略は,神経心理学症例での保続に相当するような,比較的短時間での知覚セットの状態が書き換えられないことを反映するのか,あるいは環境特異的な学習なのかを区別するために,学習効果の持続時間を調べた. 上述(1)のテストセッションは学習直後に実施するため,それが保続によるものなのか,環境特異的な学習なのかが区別できない.そこで,翌日テスト群,1週間後テスト群の2群を設け,学習効果がどれだけ遅延をおいても維持されるかを調べた.環境特異的な学習であれば,両群で効果の維持が認められると予測された.実験の結果はこの仮説を支持し,保続ではなく,本研究で得られたのは環境特異的な学習効果であることがわかった.
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