研究概要 |
知覚的構えは,われわれの意識の制御下にあるとこれまでは信じられてきた.自分が何を探そうとしているかは,はっきりと自覚でき,自分の意志で探す対象を設定できると思われていた.しかし,本年度の研究では,自分がどのような知覚的構えで認知行動を行っているかの設定は自らの意識では知り得ない場合があることを古くて新しい方法を用いて調べた.実験参加者は何も教示を受けず,キーボードとヘッドフォンのみを与えられた.そして文字が呈示されたとき,それに対応するキーを押すというオペラント反応に対して報酬〔クリック音)を与えられた.徐々にこのキー推し行動のシェイビングを行い,参加者は灰色の文字系列中に1つだけ呈示される赤色の文字を答えるという行動をするようになった.このとき,参加者は赤色の文字を探すという特徴探索モードをとっているのか,あるいは一つだけ色の異なるものを探すという異変検出モードをとっているのか?統制された条件下で妨害刺激を指標にした複数の実験を行った結果,観察者は大半が特徴探索モードをとっていたと内観報告していたが,行動成績は異変検出モードをとっていたことがわかった.さらに,意識的に探索モードを答えた後,さらに探索試行を続けても,行動成績からみた探索モードは変化せず,乖離し続けていた.この結果は,知覚的構えの選択は完全には意識的制御下にはなく,外発的要因によって規定されることを示唆している
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