研究概要 |
本研究は、20世紀初頭のドイツにおける総合雑誌の分析を通して、ドイツ教育学の展開を分析するものである。20世紀初頭、とりわけ第一次世界大戦後のドイツにおいては、多数のメディアが急成長し、いわゆるワイマール文化が成立する。ワイマール文化の特徴は、第一世界大戦後の政治的・経済的な不安定さを反映し、保守的な傾向(なとえばDie Tat)から革新的な傾向(たとえばWeltbuehne)まで幅広い論壇を生起させた。これらの新たなメディアにより醸成される社会的・文化的風土は,当然教育学の議論にも大きな影響を与えていた。本研究の意義は、こうした教育学の成立するいわば土壌を問い直すことにある。 平成21年度は3年計画の2年目にあたり、昨年度購入したMonumenta Germaniae Paedagogica(全63巻)及び雑誌Deutsche Rundschauの分析を行った。またドイツにおいて関係史料の収集を行うとともに、Hannover大学のManfred Heinemann教授から研究上の助言をいただいた。 平成21年度は史料分析が中心となり、その研究成果は仮説の域をでるものではないが、政治や社会の問題と並び教育の問題(とりわけ中等教育と高等教育のあり方)が総合雑誌の論壇においても数多く取り上げられていること、またその論調はワイマール体制に対する評価に関わらず、いずれも革新を求めていることが確認できた。今後の課題は、さらに多くの雑誌の分析を進めるとともに、主要な論客の思想的ないし理論的背景を詳細に分析することにある。
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