本研究は、知識・理解の認知的な能力形成の背後に潜むメタファーの形成において、その環境的な要因とともに文化的な要因の重要性を明らかにすることを目的としたものである。数的能力、空間知覚、言語能力などの各能力は、一般知能の概念として知能テストなどに定式化されている。ここでは、本研究では、このメタファーの形成が、論理的な思考力とどのような関わりをもち、発達を遂げているのかを、国際学力テストや日本の学力調査のテストの結果などを参照しながら、子どもたちの文化的な教育環境を探りながら、研究を進めた。その結果、論理的な思考力のメタファーは、自然の生活環境と具体的な作業や活動との関連において発達するという結論を得ることができた。論理的な思考力の発達は、一般的法則を個別の事実に適応し、その法則の中にある対照的ではない説明をするという機械的な応用にあるのではないということ、そして、物事の生起のA→Bという因果的な関係によって、その関係性を説明するメタファーをもつことが重要であることを明らかにした。すなわち、実験や事物の観察から得られるメタファーの形成こそが、認知的な構造の発達に必要な学習要件なのである。このような経験的な事実の学習の重要性は、学会などにおいて発表した。
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