日本の学校受容が1930年代に行われたことを教育制度の社会史という方法を用いて論じた。研究成果を示した報告書の構成は以下の通り。序論:教育制度の社会史にむけて、[第I部 学校システムの起動-1930年代]1章:日本社会における学校受容と接続問題、2章:教育人口動態に見る教育制度の140年-学校数・在籍者数に着目して-、3章:青年訓練所から青年学校へ-初等後教育機関の新展開、[第II部 ペダゴジーの新展開-教育実践の諸相]4章:全国小学校訓導協議会における国語教育の再構築過程-読方教育をめぐる議論から、5章:教科数学の展開と制度化-1920年代における日本中等教育数学会を舞台に、6章:青年訓練の成立-青訓の教育実践理論、7章:軍隊教育の転生と転換、[第III部 ペダゴジーの反省の新展開]8章:学校教育学を規定するもの-講壇教育学の展開とペダゴジーに着目して、である。 第I部では、就学行動に注目し、近代学校システムの導入から21世紀を迎えるまでのスパンのなかで1930年代を捉え、学校システムの起動の事実を位置づけた。戦後の就学行動の定着の礎をこの時代が準備している点を初等後教育機関の拡大のなかに捉えた。第II部では、1部を背景に学校システムと社会のシステムが相互浸透していく過程に注目し、一方で初等教育が人々に受け入れられていくなかで子どもに伝えるための工夫が蓄積されていく過程を明らかにした。中でも既定の教科のあり方について分科化された人間形成のあり方への反省的な契機を見いだした。他方、初等後教育の拡大にともなって労働や軍との連絡が内部的に課題となり、それらを受けて新しいペダゴジーを生み出していく点を示した。第III部においては、ペダゴジーの反省のレベルでの議論も新たな展開を遂げ、講壇教育学のなかで学校教育学が新しい課題意識をもって位置づけ直されていく過程を検討した。
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