本研究の目的は、教員研修の評価方法について、教育哲学的、文化比較的な観点から検討し、適切な評価方法を探究するとともに、効果的な研修のあり方について考察することである。 この目的のもと、平成21年度は以下の2つの作業を行なった。(1)物語論およびシンボル理論にもとづく、教員の成長と研修の効果に関する評価枠組みの設定、(2)教員研修の効果の分析・検討:(1)日本における「10年経験者研修」における現職教員のレポートの分析、(2)ドイツにおける研修の実態調査。このうち、(1)については、昨年度に引き続き教師教育学の文献を収集・検討した。また、物語論的アプローチを用いて人間形成の様相について検討した。(2)については、富山県教育委員会総合教育センター、ドイツ連邦共和国ニーダーザクセン州教育委員会の協力を得て、訪問調査、資料収集を実施した。また、ドイツ連邦共和国・オスナブリュック大学のH・R・ミュラー教授のもとで情報収集を行なった。 (1)の作業から、教員の成長とそれに対する研修の効果は、単純な因果関係にもとづくものではなく、自分自身および他人からの事後の振り返りと認知、言葉によるその描写という複雑なメカニズムのなかで生じる出来事であるということが確認された。(2)の作業からは、日本に比ベドイツ(州によって差がある)のほうが体系的な教員研修、教員評価の導入に慎重であること、ドイツに比べ日本の教員のほうが、授業以外の学校での職務(生徒指導、校務分掌、学校間ないしは地域固有の活動や行事等)への対応能力を求められる割合が高いことが確認された。
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