本研究は、教員研修の評価方法について教育哲学的、文化比較的な観点から検討し、適切な評価方法を探究するとともに、効果的な研修のあり方について考察することを目的とする。この目的のもと、平成22年度は以下の2つの作業を中心に研究をまとめた。(1)教員の成長と研修の効果にかんする物語論的な評価方法の検討、(2)日本の「10年経験者研修」における現職教員のレポートの分析、および日本とドイツの10年経験教員に対するインタビュー調査の検討にもとつく、効果的な教員研修のあり方の考察。 (1)の作業から、教員の成長とそれに対する研修の効果は、因果関係的に現れてくるものというよりも、自分自身および他人からの事後の振り返りと認知、言葉によるその描写という物語のメカニズムにおいて捉えられるべきものであることが確認された。また(2)の作業からは、(1)日独の教員ともに、教員の成長は個々の教員によってさまざまに異なると理解しており、一般的なライフステージ・モデルだけでは捉えきれないこと、(2)教員の成長に資する研修とは、教員自身が抱える実践的な課題に即した研修であり、また教員自身が内発的、主体的に参加する研修であること、が確認された。なお、日独の相違としては、ドイツの教員のほうが「教員の成長は個々の教員によってさまざまである」と捉える傾向がより強いこと、また同じくドイツの教員のほうが現代的教育課題に対応する研修を求める傾向がより強いこと、などが確認された。
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