本研究は、人文科学の再興と今日の高等教育における教養の復権に貢献しうる、アメリカの哲学者、スタンリー・カベル(Stanley Cavell)による哲学の再構築の意義を、哲学と教育学の融合を軸として人文科学を包括する「大人の教育としての哲学」の新領域として、国際的対話交流を通じて開拓することを目指す。 平成20年度は、海外共同研究者のポール・スタンディッシュ氏(ロンドン大学教育研究所教授)との国際的連携を主軸に、国際学会・会議での論文発表、および、同氏との共著・共編著の企画が推進された。平成20年4月には、アメリカ教育哲学会において、スタンディッシュ氏と共にシンポジウムを企画開催し、海外共同研究者であるカベル氏が基調講演を行った(英語共編著として現在出版準備中)。5月には、エジンバラ大学で開催された国際会議において英語論文を発表し(共著として出版予定)、またストックホルム大学でスタンディッシュ氏とカベル哲学の政治的意義に関する共著英語論文を発表した(国際学術誌Educational Theoryに審査受理され本年度掲載予定)。8月には京都大学で開催された国際教育哲学会第11回年次大会において、カベルと翻訳の哲学・他文化理解に関わる審査受理英語論文を発表した。また開催校企画「京都学派の教育思想--東西対話のために」の成果をスタンディッシュ氏と共に英語共編著として出版することが決定した(外国出版社にプロポーザル提出済み)。平成21年3月には、ハーバード大学にて、カベル氏との会合を行った。またアメリカ教育哲学会にてカベルの映画論と教育的意義を論じた審査受理英語論文を発表した。主たる出版業績としては、単著『<内なる光>と教育--プラグマティズムの再構築』(法政大学出版局/平成21年2月)の成果が認められ、日本教育学会年次大会のシンポジウム(平成21年8月)にて招待講演を行うこととなった。
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