研究概要 |
本本研究は、人文科学の再興と今日の高等教育における教養の復権に貢献しうる、アメリカの哲学者、スタンリー・カベル(Stanley Cavell)による哲学の再構築の意義を、哲学と教育学の融合を軸として人文科学を包括する「大人の教育としての哲学」の新領域として、国際的対話交流を通じて開拓することを目指す。 平成21年度は、海外共同研究者のポール・スタンディッシュ氏(ロンドン大学教育研究所教授)との国際的連携を主軸に、国際学会・会議での英語論文発表、外国の大学での招待講演等を中心に研究活動に従事した。平成21年7-8月および平成22年3月イギリスにおいてスタンディッシュ氏との共著・共編著の執筆作業が大幅に前進し、一つ目の編著Stanley Cavell and the Education of GrownupsがFordham University Pressとり2011年初旬に出版することで契約が成立した。同氏との共著、Democracy and Education from Dewey to Cavellについても執筆作業が進み、イギリスのBlackwell Publishers, Co.よりの2011年度の出版が決定した。平成22年3月には、ハーバード大学にて、カベル氏と上記編著、共著について話し合いを行なった。さらにスタンディッシュ氏の単著邦訳『自己を超えて』の最終原稿を出版社(法政大学出版局)に提出した。 上記の成果は、平成21年9月ヨーロッパ教育学会のパネルでのスタンディッシュ氏、および韓国の研究者とのカベル哲学の現代的意義についての発表、ケンブリッジ大学(同9月)とイタリアのカラブリア大学における招待講演(同10月)、アメリカ哲学促進学会の全体パネルでの招待講演(平成22年3月)などの国際的討議の場での議論によっても促進された。また外国のみならず、日本教育学会年次大会のシンポジウム(平成21年8月)にて招待講演を行い日本の研究者にカベル哲学の教育的意義を伝えた。さらにジョン・デューイ生誕150年を記念する英語の著作集にも日本人を代表してカベル的視点からアメリカ哲学の意義を執筆した。こうした業績を認められ、プラグマティズムの学術誌の国際諮問委員会の委員に日本の代表の一人として選出された。以上の成果を基に、来年度はスタンディッシュ氏との二つ目の編著、自身の二つ目の単著の執筆に向けて構想を発展させる予定である。
|