研究概要 |
本研究の目的は、長崎大学教育学部に創出した普通教室とオープンスペース(以下、O.Sと略)の複合空間である「無限定性」教室モデルの有効性の検証と問題点を、授業、学習の使われ方調査、および「動く」家具配置の分析を通して明らかにすることであった。また、この教室モデルの意義を明らかにするために、長崎市に存在するO.Sのある小学校とO.S.のない小学校の事例分析を行なった。 本調査・分析の結果を以下に示す。 1.「無限定性」教室におけるグループ学習の時の「動く」家具は、「主机・椅子」に、「教材置きの補助机」、「可動性の図書棚」、「パソコン台置きの補助机」、「ホワイトボード」の5点セットが基準になり、領域が形成されていることがわかった。また、「無限定性」教室における授業の時の「廊下」は教室の外縁として機能し学生の移動,待機などに使われていた。 2.O.Sのある小学校では普通教室の外縁(O.Sの内縁)に「図書」、「教材」などのコーナーが形成されており、授業場面のひとつとして展開されていた。 3.O.Sのない小学校の普通教室の授業では、教師と生徒の授業の軸が存在しているが、グループ学習の時には、それが消滅し,生徒と生徒の関係性による領域が形成されていることがわかった。 4.普通教室における対角線を軸とする授業が、ひとつの授業場面として展開されていた。 以上の調査結果などから、長崎大学に創出した「動く」家具を媒介とする普通教室をウチ、O.S.をソトとする2空間1単位の「無限定性」教室は、今後の教室モデルの一つになり得ると考えられる。
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