本研究は、1997年保健体育審議会答申において、養護教諭の新たな役割として特化された「健康相談活動」に着目し、その役割を担うための実践力育成教育モデル開発を目指すものである。 2008年度は、計画通り、(1)養護教諭一種免許状取得のための課程認定を受けている98大学を対象に質問紙調査を実施し、その結果、科目「健康相談活動の理論及び方法」の開講状況が、科目名・内容ともに多様であり、実践力養成のための養成教育として不十分である現状をとらえることができた。 また、モデルシラバスを用いての授業について、(2)授業観察等による質的分析を実施し、演習形式での教育方法・ワークシート活用の有効性を把握することができ、関係学会(日本学校保健学会・日本健康相談活動学会)で報告し、一部論文公表も行った。さらに、4道府県の現職養護教諭を対象に質問紙調査を行い、現職養護教諭の「健康相談活動」の実践力の現状について分析し、地域差を把握するとともに連携に関する課題をとらえ、関係学会(北海道学校保健学会・日本健康相談活動学会)で報告した。 養護教諭は子どもの心身の健康課題をいち早く発見し、解決のための推進役を担っているが、現職養護教諭は「健康相談活動」の能力に関して課題や困難感を持っており、また能力を担保するための養成教育の不十分さを捉えることができた一方、実践力育成に結びつくような有効な教育方法について検討できたことが本年度の研究の意義であり研究成果として重要なことである。
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